「いいってことよ」

「許せない?」


でも、最後には許すしかない。


「許せるハズもない?」


でも、最後には許すしかない。



だって、



それしか、自分を救う道はないのだから。

必死の抵抗と否認をしていた老人を、若い文五は犯人と決めつけ、手荒な真似までした。その文五が自分の過ちを知り、深くうなだれて、老人にそのときの精一杯の謝罪をする。
「とっつぁん、すまねえ」
すると、老人は肩を振るわせ、怒りをあらわにしながら文五に近寄ってくる。けれど文五の眼前までやってくると、何かを飲み込むようにして、こう言うのである。
「いいってことよ」
(「いいってことよ」杉良太郎より)