真の画家

ある国の君主が、絵を描かせるために多くの画家を集めました。彼らは一礼するとすぐ作業を始めたのですが、そのうちの一人は一礼するとそのまま宿舎に引き上げてしまいました。そこで、君主が様子を探らせると、その画家は着物を脱いで両足を投げ出し、裸になってくつろいでいました。これを聞くと君主は、「それでよい。これこそ真の画家だ。」と言ったのです。
(『荘子』)

ある国の君主が書物を読んでいると、そこに大工がやってきました。大工は、その書物に何が書かれているのか尋ねました。君主は、昔の聖人の言葉だと答えました。すると大工は、「それは昔の人の意見の残りかすに過ぎません。自分の仕事の経験から言うと、仕事のコツは手で知って心に伝わるだけで、言葉で伝えることはできません。昔の人も、本当の考えを他人に伝えることなく死んでいったに違いありません。」と言ったのです。
(『荘子』)