ブランド

 京の都の大金持ちが、父親の葬儀の導師を誰にしようかと思案し、大徳寺一休さんに頼むことになりました。依頼を受けると、一休さんは破れ衣を着て、菰(こも)をかぶり、物乞いの鈴をつけ、大金持ちの門前に立ち、布施を求めました。すると、主人は、「うすぎたない乞食坊主だ、すぐに追い出せ」と命じ、下男は棒で一休さんを打ち、追い払いました。

 翌日、一休さんは入浴して身を清め、金襴(きんらん)の袈裟(けさ)をつけ、お金持ちの家に行きました。主人は大喜びで出迎え、導師の席に案内しようとしました。しかし一休さんは末席から一歩も動きません。

 読経のあと、主人がお斎(食事)をすすめると、一休さんは金襴の袈裟を脱ぎ、お膳の前におき、「昨日は下男に棒で打たれて追い払われたのに、今日は見事なご馳走。昨日も今日も中身は同じ一休で、違うのは衣だけ。まさに、本日のご馳走は金襴の袈裟がいただいたようなものですな。一休がこのご馳走を頂けば、ふちゅうとうかいを犯すことになります。」

(「一休さん100話」牛込覚心)