うまさとコク

「何とも言えないうまさとコク」

「しっかりとしたうまさとコク」

「日本酒本来のうまさとコク」

人間にもうまさとコクと言うのがあって、

それを人間味っていうのかもしれない。

 真面目な二十歳というのは、気持ちのいいものだ。三十代で真面目もいい。四十代で真面目というのも、人によっては好感を与えることも可能であろう。
 だが、五十を過ぎて真面目とくると、こりゃあもう、たまらん。お手上げだ。そんな人間に出くわしたら、天災にあったと思ってあきらめるしかない。
 僕はといえば、若い頃は、みっともないくらい真面目な人間だった。人に文句を言わせたくないから、非のうちどころのない生き方をしようと思っていた。
(「失って、得る」大島渚より)